マンスリーイングリッシュサロン 2024年2月 アメリカ(ニューヨーク州)
今回の講師は、アメリカ、ニューヨーク州出身の Trevor LaClair さん(以下、トレバーさん)です。
トレバーさんの講演は今回で3回目。一般的な国の紹介、出身地の紹介ではなく
アメリカの政治、大統領選挙をテーマとし、シリーズで講演をしてくれています。
テイラー・スイフトさんの東京公演を見に行けるかも知れない日に講演を聞きに来てくれて
ありがとうと愉快な挨拶がありました。
トレバーさんは、2014年から岡崎在住、北岡崎駅近くで「栄イングリシュアカデミー」という
英語教室を奥様とともに運営されています。
また、トレバーさんはOIA英会話教室の講師も務められています。
大統領選挙候補者。
共和党はトランプ氏、ヘイリー氏、他。民主党はバイデン氏、他。
無所属ではロバート・ケネディ・ジュニア氏、他。
ケネディ氏はロバート・ケネディ元司法長官、上院議員の息子で弁護士。
共和党では事実上トランプ氏とヘイリー氏の候補者争い。
争点は、人工中絶、ウクライナ戦争、移民問題、中国対応、経済政策、イスラエル紛争、民主主義。
人工中絶可否は最高裁裁定により、判断が各州に委ねられた。
ヘイリー氏は妊娠15週以降の中絶は禁止を主張。
ウクライナ支援について、トランプ氏はゼレンスキー大統領に、まずバイデン大統領の息子の
ウクライナ関連の国際汚職疑惑の調査を求めた。二人の関係は近しくはない。
また、トランプ氏はプーチン大統領に否定的ではない。
移民問題についてトランプ氏は国の南側国境にバリアを作るなど強硬姿勢。
民主主義について、トランプ氏は2020年の選挙は不正であり盗まれたものだと主張。ヘイリー氏は
2020年の選挙は正当であったと認めるが、有権者の間で不正行為が広がることは危惧している。
共和党大統領選候補者選びは、州ごとに選挙が行われ6月まで続く。
最も多くの代議員数が集中するのは、3月5日でスーパーチュ-ズデーと呼ばれる。
各州には人口に基づき代議員数が割り当てられている。アメリカ全体で代議員総数は2429人。
従って過半数の1215人を獲得すれば大統領選候補者となる。
代議員獲得数の配分は、各候補者の得票数に応じた比例配分方式の州と、51%以上の得票を
得た候補がその州の全代議員数を総取りする(勝者総取り方式)州がある。
勝者総取り方式は2番手の候補者、ヘイリー氏には不利。
しかし、早期投票の調査において、州別のバイデン氏に対する得票率の優劣で見ると、
ヘイリー氏が広い範囲でトランプ氏よりも高い支持を得ており、より良い候補者と言える。
しかし、共和党の基盤はヘイリー氏の後ろではなくトランプ氏の後ろに付いている。
ヘイリー氏が代表者選挙から撤退していない理由は、自分がトランプ氏より良い大統領だと
信じていること、トランプ氏には多数の進行中の裁判案件があり、これらで何かが起こることを
期待しているから。
2016年のトランプ氏vsヒラリー氏、2020年のトランプ氏vsバイデン氏の大統領選結果を見ると
いくつかの州、スイングステートの勝ち負けで選挙の勝敗が分かれている。
今年の大統領選はどちらの再現になるだろうか。
しかし、アメリカの人々はバイデン、トランプ両氏の選挙をハッピーと思っておらず、両氏が選挙に
出馬するべきではないと思っている人の割合は高い。
ヘイリー氏は最近のキャンペーンにおいて、80歳の候補者は撤退すべきと言った。
2016年、2020年の勝敗を分けたスイングステート、ミシガン、ウイスコンシン、ペンシルベニア州
に加え、2020年にバイデン氏が勝利したジョージア、アリゾナ州も新たなスイングステート州。
大統領選の争点の第1は両党共に経済政策。次に中絶の問題。しかし中絶について2020年バイデン氏に
投票した人に比べトランプ氏に投票した人の関心ははるかに低い。ヘルスケア、環境についても同様の傾向。
移民問題については、トランプ氏投票者の関心が高い。
経済について、現在好調でありGDPは上昇、失業率は20年間で最も低い。この状況は現大統領バイデン氏に
とって有利であるが、有権者はそのように感じておらず、数字と人々のフィーリングに乖離がある。
不法移民は2023年に250万人、それ以前はもっと少なかったが年々増加の傾向にある。
これはバイデン政権の対応の甘さと見られている。
中絶可否は大きな論争事項。合法的に中絶が選択できることを望む女性の声は大きくデモも行われている。
最高裁判事の任命権は大統領にある。保守派判事を望む人々は、その理由からトランプ氏を選択する
可能性がある。
オバマケアとも呼ばれるヘルスケア(医療保険)については、民主党の方がより良くハンドリングすると
人々は思っている。
トランプ氏の問題点は、2020年大統領選におけるジョージア州での不正関連、連邦議会議事堂襲撃の
扇動、機密書類の持ち出し、ポルノ女優への口止め料支払いなど裁判になっている多数の事案。
また、側近の高官やスタッフが17人も去ったこと。
トランプ氏から離れた高官やスタッフはいずれもトランプ氏を批判している。
トランプ氏の再選を望まない人は全体の64%。民主党では92%、共和党でも27%の人がトランプ氏の
再選を望まない。
過去に大統領退任後、再度返り咲きを目指した人は4人いたが3人は失敗している。
唯一成功したのは、クロバー・クリーブランドだけであり、第22代と第24代の大統領になった。
バイデン氏の年齢が問題だと思っている人は全体の80%、民主党ですら70%の人が問題だと思っている。
バイデン氏の年齢は大統領として最も高齢。再選されると任期終了時には86歳になる。
トランプ氏はバイデン氏より3歳若いがそれでも2番目の高齢。
23年前に大統領を終えたビル・クリントン氏は現在でもこの二人より若い。
この2年間のバイデン氏の支持率は30%台後半で歴代大統領の中で低い。再選に向けての問題点である。
その他の問題の一つは副大統領がカマラ・ハリスであること。アメリカでは大統領が死亡または退職が
生じた場合、副大統領が大統領になる。
バイデン氏が再選され、死亡または退職という事態が生じた場合、ハリス氏が大統領になる。
ハリス氏は民主党内でのアピールが少なく人気がない。共和党ではなおさら。
人々はハリス氏が大統領になることを望んでいないが、バイデン氏が再選された場合、ハリス氏が
大統領になる可能性を肯定することになる。これを避けるためバイデン氏に投票しない人もいる。
次の問題は息子のハンター・バイデン氏の多数のスキャンダル。
さらにバイデン氏は人々を熱狂的にさせる影響力を持っていない。オバマ大統領のようではない。
一方、トランプ氏にも課題がある。
副大統領を誰にするか。おそらく女性、マイノリティから選ぶか。
裁判になっている多数の案件。有罪になれば、トランプ氏に投票しない人は多数になる。
無所属グループからの候補者。彼らは当選しないとしても、トランプ氏の得票を奪う可能性がある。
ウクライナ戦争について、トランプ氏はウクライナへの資金援助を減じて国内の事案に対して予算を
振り向けるだろう。
イスラエル・ハマス紛争、シリア国境付近の米軍施設への攻撃など取り組み姿勢を問われる課題がある。
講演のあとのQ&Aでは、多くの質問に答えてくれました。
国の南側国境の壁、有権者がトランプ氏を信じる理由、二人の候補者以外のベターチョイス、
オンラインや郵送での投票方法、スイングステート、またトレバーさんのホームタウンについてなど、
多くのQ&Aがなされました。
トレバーさんの出身地はニューヨーク州のカナダ国境近く、フランス語も話される地域とのこと。
トレバーさん、ありがとうございました。
当日は約80名の方が参加され、リブラで一番大きい会議室がほぼ満席となるほどの盛況でした。
参加者の皆様、ありがとうございました。
(文責 人材育成部会ボランティア 中野一男)
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