マンスリーイングリッシュサロン 2024/7 中国
今回の講師は、中国出身の向柳静さん(以下、シャンさん)です。
シャンさんは現在、名古屋大学大学院にてダンス(舞踊)の研究をされています。
今回はダンスを通して、中国の周、唐、宋王朝の歴史、文化を紹介して下さいました。
シャンさんの今日の目標は、中国ダンスの歴史や内容を紹介するだけではなく、ダンスを通して
中国の文化と歴史を伝えることです。
シャンさんは、小学校から高校までの間、絵画、ピアノ、ダンスを勉強しました。しかし、正しく線を
引くことを要求する絵画の先生、音楽の情熱やストーリーを理解することなくピアノ演奏を要求する
先生は好きになれなかった。ダンスの先生はそういう指導の仕方ではなく、表現することを教えた。
子供にとって大事なことは良い先生を見つけることである。
大学卒業までに将来の方向を考え準備した。
大学でダンスの先生になることを目指し、8年の博士課程へ進んだ。
最初に英語の勉強をし、ダンスだけでなく芸術全般についても勉強をした。
大学の教授は、30歳になるまでに自分自身を知り、一つのゴールを目指すようアドバイスを
してくれた。
ダンスは体の動作だけでなく、情熱、気持ち、ライフスタイルまで表す。
日本の大河ドラマについての関連から始めます。
岡崎は昨年「どうする家康」で話題になったが、今年の大河ドラマは「光る君へ」です。
このドラマの中で主人公まひろ(紫式部)が宋王朝の医者に「ありがとう」を表現する場面がある。
この時、まひろは言葉とともに手の動作でそれを表した。
尊敬、感謝、お詫びを表すおじぎは中国では ”行礼” と言われ動作(ボディランゲージ)で気持ちを
表すものである。
"行礼” は周王朝の儀式と音楽が発祥である。
周王朝の ”礼楽制度” は、西周王室によって作られ広まった。それは礼と音楽からなる。
礼は異なる身分に対して求められる儀式や義務を含む行いであり、階級制度を形作る。
このことは、異なる階級の人々は異なる規模の音楽とダンスを持つことを意味する。
最上位の天子は8列64人、諸侯は6列36人、大夫は4列16人、最下位の士は2列4人の
人が踊る。
"Munmyo ilmu" ダンスは宋王朝から韓国に伝わった。
中国にも類似のダンスはあるが、韓国のダンスが古い周王朝の様式を残している。
このダンスは孔子を賢人としてたたえるために行われたので、天子と同じく64人で踊られる。
論語は孔子の言葉や行動を記録したもの。孔子の政策、美学、モラル、考えを伝え、
古代中国では人々の教育に使われた。
論語の中から二つ。
1.は遠方より来る友を歓迎すること。
マンスリーイングリッシュサロンに来られる方々が歓迎されるのと同じ。
2.は3人で歩けば少なくとも1人から有意義な知識や経験が得られるという教訓。
”Letters” というダンスは孔子の教えを生徒達が記録することを表現する。
その文章は竹でできた巻物に書かれている。
唐王朝は中国歴史の中で特別な時代である。
それは強い政治、経済繁栄、輝かしい文化などである。
唐王朝は強い政治体制を構築し、農業においても進んだ技術を取り入れ収穫を増やした。
シルクロードにより東と西の文化交流を盛んにし、詩や絵画などの文化も栄えた。
クチャ文化は仏教芸術の音楽とダンスに焦点が当てられた。
武則天は中国歴史のなかで、唯一の女帝である。
"Ancient Call" と言うクチャダンスは唐王朝文化の多様性を示す。
西方地域のインド、ギリシャ、ロシアの影響を融合したもの。
"Prosperrous Twin Beauties" は2人の王女のダンス。
宋王朝は中国歴史の中で重要な時代であり、北宋と南宋に分けられる。
高度な文化と経済繁栄、技術発展で知られる。
宋王朝の特徴
1.社会構造の構築。4階層に区分けし、学者がステータスを持った。王室に仕える者を試験で
選び、官僚制度を作った。農民は大きな税負担を負った。技能者は技術を発展させ経済を繁栄させた。
2.教育と王室試験。官吏登用への道。
3.文化繁栄。文学、詩、風景画などが盛んとなった。
4.技術発展。中国の技術発展の全盛期であった。印刷技術、火薬、方位コンパスなど。
5.都会生活。経済発展により都会生活が広まり商業活動も盛んになった。夜市など行われ
ハイクラスな文化生活が行われた。
”春日” のダンスに添えられた歌詞は宋王朝に書かれた。このダンスは山中で踊られ、
宋王朝の美しい風景が背景となっている。
”Night Banquet under the Lanterns" は皇帝のための夜の宴会の準備を表したダンス。
講演のあと、シャンさんはQ&Aで多くの質問に答えてくれました。
言語、盆踊り、歴史勉強、ダンスの好み、日本での生活、中国のコンビニ、子供のダンス教育など、
さかんな質疑が行われました。
日本での生活は初めはとまどったが、中国より暮らしやすく、リタイア後は日本に住みたいとのことです。
シャンさん、ありがとうございました。
熱心に聴講する皆さん。ご参加ありがとうございました。
今回シャンさんから紹介いただいた沢山の中国古典舞踊の動画は、美しく魅力的なものでしたが、
本ホームページ上で動画をお見せすることができず残念です。興味がある方はYouTubeなどで
探していただければ、類似のものは見ることが出来ると思います。ぜひどうぞ。
(ホームページ担当 人材育成部会ボランティア 中野一男)
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